
「プロデューサー、夜分遅くにすみません」
「……千早?」
ライトの眩しさに慣れた目に映ったのは、間違いなく如月千早だった。
外の寒さで頬が少し赤みがかっており、素晴らしい歌声を奏でる唇を持つ口から吐く息は白い。
白いコートを羽織ってはいるが、寒そうにしているのが微かに動く細い体を見て解る。
「はい。千早です。あの、もしかしてお邪魔でしたか?」
「えーっと、別に。テレビ見てただけだし」
「そうですか。その、少しお話が」
「解った。じゃあ何処で話す? 俺の部屋はちょっと……」
「プロデューサーのお部屋で、いいです」
「それで、どうした? 今日はみんなとパーティじゃなかったのか?」
「はい。とっても楽しかったです。社長からもプレゼント、頂いてしまいました」
「まるでみんなが家族みたいに思えて……。きっと、765プロが私の家で、みんなが家族なんだって」
「そう思っても、いいんでしょうか? それを、プロデューサーに聞きたくて」
「ご迷惑、でしたよね。こんな時間に」
「家族、見つかって良かったな。今の千早を見て、本当にそう思うよ」
「あ……、ありがとうございます」
「よし、今日はもう遅い。明日もゆっくり休んで」
「あ、あの、プロデューサー!」
「どうした?」
そう口にした瞬間、千早に抱き締められていた。
長い髪がゆっくりと目の前で舞い、ほのかに甘い匂いがする。
密着した体の柔らかさや、伝わる鼓動の早さを感じるけれども、
突然の千早の行動に思考が停止し、受け止めることもできずにソファへ倒れてしまう。
「……私、欲しいんです。プロデューサーが。その、今日は楽しかったです。みんながお祝いしてくれて。……でもプロデューサーがいなかったから、物足りなかったんです。本当の、家族になりたい人が、近くにいなかったから」
「千早……」
「去年の誕生日から、どんどん気になって、振り切れなくて、オフの日でも、プロデューサーが何してるのかなって、ずっと考えたりしてました」
「……傍にいてくれませんか? ずっと、私の傍に」
「でも、俺……」
「いいんです」
「いいのか?」
「はい。後悔は、しませんから」
「……っはぁ。ふふっ、欲しかったプレゼントがやっと貰えました」
「こんなのでいいなら、今日からはもういつだってくれてやるよ」
「じゃあ今度からは、遠慮しません」
「そ、そいつは大変な事になりそうだな」
「……それで、あの、実は明日、行きたい所があるんです。一緒に行って頂けますか? その、あの子に伝えてあげたいんです」
「もちろん、構わないよ。っと、言い忘れてた。千早、誕生日おめでとう」
「はい、ありがとうございます! それじゃあ、お休みなさい。プロデューサー」
そう言った彼女の背中には、翼が生えていた。
決して見間違いなんかじゃない。
檻から解き放たれた天使は、世界中を飛び回りその歌声で更に多くの人々を魅了していくだろう。
千早と同じ道を共に行くため、今日は翼を休めよう。
明日からはきっと、今までよりも広い世界を旅することになるはずだから。
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同人誌 THE iDOLM@STER Birthday for you! アフターストーリー [Fly away]
text:NOMURA193